久々のブログ更新となります。
そろそろ確定申告の時期が近づいてきましたので、今回はデュピクセントの気になるお金(医療費)についてのお話です。
昨年4月、10年ぶりとなるアトピー性皮膚炎治療薬、デュピクセント(一般名:デュピルマブ)が本邦でも保険適用されました。薬価収載から1年が経過する5月には、「在宅自己注射指導管理料」の対象薬剤となり、「*投薬期間制限」が解除される見込みです。在宅自己注射の適用となれば、収入や条件により医療費を大幅に軽減できる可能性があります。
※新医薬品は、厚生労働省告示第107号(2006年3月6日)に基づき、薬価収載後1年を経過する月の末日までは、投薬は1回14日分を限度とされています。
まずは現在のデュピクセントの薬価についておさらい
保険適用でデュピクセント(300㎎)1筒当たりの価格は81,640円となります。
※薬価の引き下げにより1筒当たりの価格は66,356円(令和2年4月現在)
1筒約24,500円(3割負担)とかなり高額な医療費となっており経済的な負担が大きく、治療になかなか踏み出せない、治療継続が困難な患者さんも多くおられるのではないでしょうか。
そんな患者の負担を軽減してくれる「高額療養費制度」と呼ばれるとても有難い制度についてこれからご紹介します。
高額療養費制度とは
同一月(1日~末日)に医療機関へ支払った医療費(自己負担額)が自己負担限度額を超えた場合、払い戻しを受けられる制度です。
自己負担限度額について
原則として
として算定されます。
※保険外併用療養費(差額ベッド代など)と療養給付と直接関係のないサービス等(おむつ代など)、健康保険適用外の治療費や入院中の食事等は含まれません。
払い戻しを受ける際には、注意が必要です。一旦、医療機関の窓口で、自己負担額を全額支払う必要があります。また、払い戻しを受けるまでには、通常申請から3か月程度かかります。
窓口負担が大きい場合は、高額療養費の現物給付「限度額適用認定証」を加入している保険組合等に事前に申請しましょう。(参照:全国健康保険協会)
※「認定証」の提示により、窓口での支払額を自己負担限度額にすることが出来ます。
自己負担額について
・医療機関ごとに算出し、同じ医療機関であっても、医科入院、医科外来、歯科入院、歯科外来に分けて計算します。
・医療機関から交付された処方せんにより調剤薬局で調剤を受けた場合、薬局で支払った自己負担額を処方せんを交付した医療機関に含めて計算します。
自己負担限度額の算定方法について
月額の総医療費と標準報酬月額により算定することが出来ます。
計算式は以下を参照(2018年8月現在)
70歳未満の方
※1総医療費とは保険適用される診療費用の総額(10割)です
(引用元:全国健康保険協会)
但し、標準報酬月額と言われても、すぐにはわかりませんよね。
そこで解りやすく年収で見てみましょう。
では、実際にいくら払い戻されるか計算してみます。
※今回は単純に総医療費(注射料のみ)として算定します。
(尚、10円未満の端数は四捨五入しています)
例.) 30歳独身サラリーマン 区分(ウ)のケース
デュピクセント(300mg)1筒 薬価81,640円 月2回投与
在宅自己注射適用後、2か月分のまとめ処方の場合
(注射料) デュピクセント(300㎎)×4筒≒326,560円
(3割負担) 97,970円
(自己負担限度額) 80,100+(326,560-267,000)×1%≒80,700円
(払い戻し金額) 97,970円-80,700円≒17,270円
※「限度額適用認定証」の交付を受けている場合、窓口での負担額は自己負担限度額の80,700円となります。
多数回該当について
高額療養費制度を利用して払い戻しを受けた月が過去1年間(直近12か月)で3か月以上ある場合、4回目以降の自己負担限度額がさらに軽減されます。(※上記表参照)
同一の医療保険に加入する家族で複数の医療機関を受診したり、同一人が複数の医療機関を受診して該当した場合も適用されます。
※但し、同一保険者での適用となります。転職などで、健康保険組合から国民健康保険に加入した場合など(途中で加入する医療保険が変わった場合)、変わる前の医療保険で高額療養費の支給を受けた回数を通算することはできませんので注意が必要です。
世帯で合算して申請する場合
世帯(同一健康保険での被保険者・被扶養者)で支払った医療費の合計が高額になる場合の負担軽減措置です。但し、夫婦共働きなどで別々の健康保険に加入している場合は合算できません。
70歳未満
70歳未満の場合、同じ世帯の2人以上が、同じ月に、それぞれ自己負担額(21,000円以上)を医療機関に支払い、その合計額が自己負担限度額を超えた場合、高額療養費制度の対象となります。
同一人合算の場合
70歳未満
同一人が、同じ月に複数の医療機関を受診し、それぞれの医療機関に対して21,000円以上の自己負担額を支払い、その合計額が自己負担限度額を超えた場合も、特例として負担軽減措置が設けられています。合算して申請すれば払い戻しが受けられます。
まとめ
いかがでしたか?
少し複雑で解りにくかったかも知れませんが、ご自分の医療費や年収、またご家族の医療費など一度確認してみてください。現在、治療を断念されている患者さん、経済的な負担で継続ができない患者さんも、高額療養費制度を上手に利用すれば治療を受けられる可能性があります。
高額療養費制度を利用するには、加入している健康保険(保険者)に申請する必要があります。会社員、自営業などにより申請先が異なりますので、詳しくは加入されている健康保険組合、または市町村、各種国民健康保険組合、共済組合などへお問い合わせください。
※高額療養費制度は国や皆さんの税金によって支えられている制度です。
今回は高額療養費制度について、お話してきましたが、医療費はまだ戻ってくる可能性があります。それが「医療費控除」です。正確には課税所得を減らせる、または既に支払った税金の還付を受けとることが出来ます。
医療費控除の対象には、年間の治療費以外にも、通院のために掛かった交通費や市販薬の購入代金(セルフメディケーション税制)なども含まれます。確定申告が出来る方は、医療費控除制度も上手に利用しましょう。
「医療費控除」について詳しくは、国税庁HPにて、ご確認ください。
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